人間の食べ物を犬に与える話 オイル編②
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人間の食べ物を犬に与える話 オイル編2
油に対する誤解が少しは解けたでしょうか?
ところで、油の持つすばらしい働きについてもう少し考えてみましょう。
サラダ油やてんぷら油に多く含まれているリノール酸やα―リノレン酸などは必須脂肪酸と言って、実はワンちゃんの体にとって無くてはならない栄養素なのです。
その働きは実に多岐に渡ります。
必須脂肪酸であるリノール酸が不足すると、皮膚病や繁殖障害、成長阻害など、重大な障害がもたらされる事が分かっています。
皮膚病学の世界では、皮脂に含まれるリノール酸の量と皮膚の表面にいる細菌の数とが逆比例することが報告されています。 つまり、リノール酸をたくさん持っている程、感染し難いという事です。
私の経験でも、その事を実証する例は数限りないのですが、笑えない間違いでとんでもなく効果を表した例が有りました。 それは、こんな例でした。
もとより、皮膚病治療や外耳炎治療にはリノール酸をお勧めすることが多いのですが、ワンちゃんの外耳炎の治療に来られたある飼い主さんは、その与え方を間違えられたのです。 私は、食餌にマーガリンを足して欲しいとお話したつもりだったのですが、不幸にも耳に塗るように指示されたと誤解されたのです。
治療前には、かなり具合の悪い慢性の外耳炎だったのですが、一週間の間、せっせと耳にマーガリンを塗られたそうです。 その時の検査では、マラセチアのほか細菌も見られたのですが、一週間後に経過観察で来院されたときには、耳の中がすっかりキレイになっていました。
このお話では、決してそのような方法を取る事をお勧めしているわけではありませんので先におことわりしておきます。
しかし、不幸な出来事が、見事な治療結果を生んだ不思議な症例でありました。
さて、このように動物の身体ではリノール酸が菌の活動を押さえ込む働きがあるのですが、残念ながらドッグフードからリノール酸を上手に取る事が難しいのです。 なぜなら、リノール酸という油が非常に劣化・酸化しやすいからです。
この問題を解決するためには、酸化防止剤の力を借りなければならないのですが、この酸化防止剤がエトキシキンやBHTという発がん性物質なのです。
すなわち、フードを利用している場合は、リノール酸を摂るためには発がん性物質を同時に食べなければならないのです。
発がん性物質を食べないなら、リノール酸は酸化した物を食べる事になるのです。
逆にリノール酸を食べないでいると、良質の皮脂は作られませんから、マラセチアやブドウ球菌などの繁殖は抑えることが出来なくなるのです。
そのために、マラセチア性外耳炎やマラセチア皮膚炎、膿皮症などが発生しやすくなるのです。世間ではこれらの病気が多いようですが、理由は明確です。
逆に手作り食で十分な量の新鮮な必須脂肪酸を摂っているワンちゃんたちには、これらの病気はあまり見られません
高いお薬で、マラセチアや細菌をやっつけるより先に本来するべきことが有るという事がお分かりいただけたでしょうか?
油の話はまだ続きます。