人間の食べ物を犬に与える話 オイル編③
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人間の食べ物を犬に与える話 オイル編3
皮膚病で悩んでいる方の中には、自分のところのワンちゃんの皮膚や被毛がべとべとしているから、油の摂り過ぎだと考えている方もおられると思います。
殆ど毎日のように洗っているのに2~3日するとすぐにべとべになってしまう。 だから、きっと油が多すぎるに違いないと思っておられる方もいるでしょう。 診断名も脂漏症と呼ばれていますから、ますます確信を深めていることでしょう。
しかし実際には必須脂肪酸が不足しているケースがほとんどです。
つまり、ワンちゃんの皮膚では、リノール酸を皮脂として出せない為に、代用品を分泌して、そのためにべとべとになっています。このようなワンちゃんに抗酸化栄養療法と必須脂肪酸の補給を行うとほとんどのケースで被毛はサラサラの状態に変化します。
さて、ワンちゃんは、人間の食べている食べ物から植物油を取り込まなければならないことが、何となく分かっていただけたでしょうか? では、油を与えるときの注意を解説しておきましょう。
油の量
皮膚病学の専門書では、体重10kg当たり、ティースプーン一杯のサラダ油を毎日与える事を推奨しています。
このティースプーンと言うのが、案外厄介で、小さじ一杯の大きさと考えるか、小指の爪の先ほどの大きさの物と考えるかで、随分と大きさが違ってきます。
専門書で約3ccと書いていますので、使い捨てのプラスチック製スプーンがちょうど良い大きさと言う事になります。
しかし、この量で下痢をしてしまうようなケースでは、もう少し量を減らす必要があります。また、フードの過酸化脂質が体内に残っている場合は、連鎖的脂質過酸化反応によって必須脂肪酸が体内で劣化してしまいますので、抗酸化栄養療法を組み合わせる必要があります。
いま、私どもの病院でよくお勧めしている方法は、今までの食餌の上にトリのカラアゲを一つ乗せることから始めていただいています。
もちろん、コロモは外さずにそのままつけて与えます。お味のほうも、人の食べている物、そのままで与えていただいています。 そして、フライやてんぷらなど、いろいろな揚げ物を一通り与えることが出来るようになったら、次にその量を増やします。
こういうと、揚げ物の油は、熱で酸化してしまうので、良くないと言われる事も有りますが、油の製造会社で長年研究を重ねた研究者が書かれた書籍では、かえって熱を加えたほうが、酸化した油を破壊することが出来るので、かえって良いとも言われています。
また、保健所の検査員の方の書かれた論文では、加熱した中華総菜が、2週間室温で放置されていても酸化・劣化しなかったと報告しているくらいです。ちなみにフードは、この基準より5倍もゆるい規制値をクリアできませんでしたが・・・
ここで、肥満の心配をされる方も多いかと思いますが、人間の食餌を足した分、フードは減らすべきです。
とは言っても、殆どのケースではフードに対して興味を失って、食べなくなってしまうことが多いので、量的な心配はそれほど重要ではありません。
ただし、体重は時々計って、あまりにも増えるようなら、やはりフードの量は減らすべきです。
逆に、フードを全く食べなくなって、それに対して心配される方も多いことでしょう。
人間の食べ物を与えると、フードを食べなくなってしまうから良くないと言われる方もおられますが、私は、ワンちゃんにフードを食べさせたいとは全く思っていませんので、いっこうに構わないと考えています。
油の種類
人間が使っている油にも、いろいろな種類のものがあります。 どれを使うべきなのかは、症状と目的によって違います。
一般的には、普通の日清サラダ油か綿実油をお勧めしています。
オリーブ油は、痒みを和らげてくれる効果が高いのですが、単独では、皮膚病や外耳炎を治すことは出来ません。
オメガ–3が豊富で人気の、しそ油や、えごま油も痒みを良く和らげ、抗アレルギー治療として非常に有効ですが、菌との戦いでは無力です。
ちなみに、日清サラダ油には初めからオメガ-3の成分が入っています。さらにその比率もオメガ–6とオメガ–3の比率が5対1という黄金比率で入っていますので、オメガ–3の不足を心配する必要はありません。
バターや、牛乳などの乳製品、牛脂などの飽和脂肪酸は、これら痒みのコントロールの目的には逆行する事を知っておいて下さい。